赤本・青本基準-交通事故の適正な慰謝料は?
1 赤本基準と青本基準について
交通事故の損害賠償について、「赤本基準」や「青本基準」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるかと思います。
赤本とは、日弁連交通事故相談センターが毎年発行している「損害賠償額算定基準」という書籍の通称です。
青本とは、日弁連交通事故相談センターが定期的に発行している「交通事故損害額算定基準」という書籍の通称です。
参考:日弁連交通事故相談センター・当センターの刊行物について(青本及び赤い本)
それぞれ表紙が赤色、青色であることから「赤本」「青本」と呼ばれています。
どちらも、交通事故における損害賠償額の算定基準として使用されています。
2 赤本・青本基準が利用される場面
赤本・青本は、弁護士が担当している事件の慰謝料を算定する際に、主に利用されます。
実務では、赤本の方が広く用いられている印象があります。
裁判所も、和解案を提示する場合は、両当事者の納得感を得られやすいようにするため、赤本・青本のいずれかの基準によるとこうなるという説明をすることがあります。
もっとも、慰謝料は、諸般の事情を考慮して裁判官が裁量により算定するとされておりますので(大判明治43.4.5)、裁判所が、赤本・青本の基準に従う必要はありません。
したがって、裁判所は、それらと異なる基準・算定方法によって金額を認定することも可能です。
実際には、まったく無視することまではせず、事実上の考慮はなされているように思われますが、赤本・青本の基準もあくまで一例であり、必ずこの基準の金額になるわけではないことに留意しておく必要があります。
3 保険会社が提案する慰謝料は赤本・青本に従うとは限らない
共済を含む保険会社も、赤本・青本の慰謝料算定基準があることは認識しています。
とはいえ、保険会社は、より低めに設定された自賠責基準か保険会社の独自基準で算出してくることがほとんどです。
被害者の方が、慰謝料の金額をめぐって保険会社と交渉したものの、「これが適正な金額です」「これが当社として出せる上限額です」などと言われてしまい、赤本・青本基準を持ち出しても増額に応じてもらえなかったという話をよく耳にします。
その理由については、はっきりとしたことはいえませんが、違法にならない程度に支払う保険金を減らして、できる限り損害率を改善しようとしているのではないかと思われます。
そこに弁護士が介入することで、赤本・青本基準を用いざるを得なくなり、結果として賠償金額が増額されるケースは珍しくありません。
そのため、保険会社の提示金額に不服がある場合は、一度弁護士に相談されることをおすすめします。
4 赤本・青本基準の計算の仕組み
赤本と青本のいずれにも、入通院期間や日数に応じた慰謝料の目安表が記載されています。
ただし、同じ治療期間であっても、赤本と青本ではそれぞれ慰謝料の目安が異なってきます。
⑴ 赤本基準の場合
赤本基準には、別表Iと別表IIの2つの目安表があり、骨折や脱臼といった他覚的にみてとれる外傷がある場合など重傷のケースにおいては別表I、むちうちなど比較的軽傷のケースにおいては別表IIが適用されると考えられています。
別表IとIIでは、重症の場合に適用される別表Iの方が金額も高く、例えば、治療期間が同じ3か月の場合でも、別表Iが適用される場合は約73万円、別表IIが適用される場合は約53万円が慰謝料の目安となる金額になります。
⑵ 青本基準の場合
一方、青本基準の場合、目安表は1つだけです。
その代わり、金額に幅があり、例えば治療期間3か月の場合、46万円~84万円が慰謝料の目安の金額とされています。
そのうえで、軽傷のケースは下限の金額、特に重傷のケースは上限の金額、それ以外の中間的なケースは上限の80%程度の金額を目安とすべきとされています。
どちらの本を基準として慰謝料を算定するのが良いのかは、個別のご事情によって異なりますので、詳細は弁護士にご相談ください。
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