持病が損害賠償額に影響を与える場合
1 交通事故における持病の考え方
交通事故被害に遭い,車両が損傷してしまった,怪我を負ってしまい通院を余儀なくされたといった場合には,被害者は加害者に対して,発生した損害を賠償するよう請求することができます。
もっとも,あらゆる損害について賠償請求をすることができるわけではなく,事故からそのような損害が発生することが相当といえる範囲(相当因果関係の認められる範囲)に限定されます。
さらに,事故当時,被害者の方に持病があり,その影響で怪我の治療が長期化したような場合にまで加害者がすべての損害を負担するのは公平ではないため,賠償すべき金額を減額すべきとする考え方があります。
これは,最高裁判所でも認められている考え方であり,素因減額と呼ばれています。
2 持病と素因減額
素因減額の中には,心因的素因と身体的素因があります。
心因的素因とは,被害者の方の性格や心理的な側面をいいます。
判例では,事故に遭ってむち打ちの傷害を負った方が,外傷性神経症(本人には自覚なく,損害賠償額を増額させたいという欲求から,過度に痛みを感じるようになること)にかかってしまった事案では,被害者の方の心因的素因も治療の長期化に影響を与えたとして素因減額が認められています。
身体的素因とは,被害者の方が元々持っている持病・既往症のことをいいます。
判例では,被害者の方が元々患っていた後縦靭帯骨化症が治療の長期化や後遺障害の程度に影響を与えたとして,素因減額を認めています。
もっとも,この素因減額という考え方自体が,被害者と加害者の公平を図るものであることから,被害者の持つ心因的・身体的素因が「疾患」といえる程度のものであるときに素因減額という考え方を適用すべきとの最高裁判例も出されています。
3 持病がある方で交通事故に遭われた方は弁護士法人心まで
過去の裁判例を見ていくと,同様の持病を持った方でも,素因減額という考え方を取った判例ととらなかった判例に分かれる場合もありますので,具体的な症状や個別的な事情によっても素因減額という考え方が適用されるか否かは変わってきます。
持病がある方で交通事故に遭われた方は弁護士法人心までご相談ください。