交通事故によって支出することになった家屋改造費
1 家屋改造費の賠償
交通事故により後遺障害が残り、現在の住居では日常生活が困難であり、家屋を増改築や改造する必要が出る場合があります。
たとえば、いわゆる障害者向けの構造の住宅に改築したり、バリアフリーの仕様にしたり、手すりを設置する必要がある場合等があります。
このような場合は、損害賠償の内容として、家屋改造費が認められる場合があります。
2 家屋改造費の賠償が認められる場合
家屋改造費が賠償対象として認められるのは、家屋の改造が必要かつ相当である場合です。
そのような場合には、改造に必要な実費ベースで賠償が認められます。
しかし、家屋改造が必須とまでは言えない、そのままでも住み続けられるが、家屋を改造したほうがより居住しやすいという程度にとどまるような場合には、家屋改造費が賠償対象として認められない可能性が高くなります。
3 家屋改造費が認められた例
家屋改造費は、一般的に高い等級の後遺障害が認められている場合の方が認められやすい傾向にあります。
たとえば、後遺障害等級1級が認定された四肢麻痺のケースでは、地方裁判所で、車いす用の階段昇降機の設置費が認められたものがあります。
また、1級の後遺障害のケースで、家屋新築に伴いエレベーター設置による電気代等の増加に関し、増加分の一定割合を認めた裁判例があります。
更に、2級の後遺障害のケースで、旧建物を改造すると新築と同様ないしそれ以上の費用がかかるため、新築相当とし、新築費用の一部を認めた裁判例もあります。
ただ、中には後遺障害等級の中では比較的低い等級の後遺障害の等級である12級であっても、右膝関節機能障害につき、和式トイレを洋式に改造する、玄関から公道までの階段に手すりを設けるなどの改造費が認められたケースがあります。
また、12級13号と12級7号による併合11級が認定された高齢女性のケースで、地方裁判所が自宅前の階段改修費用を認めたものがあります。
4 家屋改造費を請求する際の注意点
家屋改造費に関して注意が必要なのは、自宅の改造が、同居する被害者以外の家族にとってもメリットである場合、そのことを考慮して、賠償対象額が減額される場合があるということです。
たとえば、自宅にエレベーターを設置したが、そのエレベーターはほかの家族も利用でき、他の家族の便利さを向上させるものであることから、エレベーター設置費用等は賠償の際大幅に減額されてしまうことがあります。
いずれにしても、家屋改造の必要性、相当性を被害者側で主張、立証していなかければなりませんので、後日家屋改造費を賠償請求するためにも十分に準備をしておく必要があります。