死亡事故の慰謝料交渉
1 死亡事故の慰謝料金額について
交通事故被害に遭われ、被害者の方が、亡くなってしまった場合、死亡したことに対しての慰謝料が相手方から支払われます。
この場合の慰謝料の算定基準は、自賠責基準、任意保険基準、裁判基準の3つの基準がございます。
⑴ 自賠責基準
自賠責基準は、自賠責保険から支払いがなされる場合の基準です。
自賠責保険は強制加入の最低限の保険ですので、金額は上記3つの基準のうち、最も低いものです。
自賠責基準は次のような基準です。
- ①亡くなった被害者本人に対して:350万円(※ただし、実際にこれを受け取るのは相続人)。
- ②残された遺族に対して、
- 請求権者が1人である場合:550万円
- 請求権者が2人である場合:650万円
- 請求権者が3人以上である場合:750万円
請求権者の方が、死亡した被害者に扶養されていた場合には、上記の慰謝料額に200万円が加算されます。
もっとも、前述したとおり、これらの金額は最低限の支払い基準ですので、これを超える金額は、加害者ないし加害者加入の任意保険会社に請求しなければなりません。
⑵ 任意保険基準
任意保険基準は、任意保険会社の支払い基準です。
任意保険会社の支払い基準は、保険会社によってばらつきがあり、担当者によっても金額が異なることがあり、不透明な部分もございますが、おおむね、自賠責基準と裁判基準の金額の中間あたりというイメージです。
⑶ 裁判基準
裁判基準は、裁判所に裁判を起こし、裁判官が判決を出す際に参考とする基準です。
弁護士に依頼した場合は裁判基準を用いて死亡慰謝料を算定することがほとんどです。
実際に裁判を起こす場合というのは実際は多くなく、裁判を起こさないのであれば裁判基準と全く同等に支払われるわけではないのですが、裁判基準をベースに交渉するため、自賠責基準や任意保険基準よりも金額が上がることが多いです。
裁判基準により算定した場合は次のとおりです。
① 一家の支柱の場合
2700万円~3100万円
一家の支柱の方(その被害者の世帯が、主として被害者の収入によって生計を維持している場合)が亡くなられた場合には、おおむね上記の金額が賠償されます。
② 一家の支柱に準ずる場合
2400万円~2700万円
一家の支柱に準ずる場合とは、家事の中心をなす主婦、養育を必要とする子を持つ母親、独身者であっても高齢な父母や幼い兄弟を扶養しあるいはこれらのものに仕送りをしているような者などをいうとされています。
③ その他
2000万円~2500万円
なお、以上の①~③に関しては、亡くなられた方の年齢、家族構成などにより、上記の範囲内で決定するとされています。
④ 近親者慰謝料について
上記①~③の慰謝料については、基本的に死亡被害者の近親者固有慰謝料(民法711条)も合わせた、死亡被害者一人当たりの金額となります。
従いまして、近親者が多いから慰謝料の総額が増えるというものでは基本的にはございません。
2 死亡慰謝料の交渉について
死亡慰謝料の交渉については、弁護士を入れなければ、保険会社は多くの場合、自賠責基準か任意保険基準で算定した金額を提案します。
また、保険会社は、弁護士が介入していなければ、あれこれと理由をつけてこの金額が精一杯です、これが限界ですなどと低額で示談に応じさせようとして来ることが多いです。
これでは、十分な賠償とは言えません。
そこで、死亡慰謝料の交渉を弁護士に依頼し、裁判基準をベースに交渉したほうが、十分な金額となることが多いです。
なお、被害者に過失割合がある場合はこの限りでないこともありますので、一度ご相談ください。
また、死亡事案では、死亡慰謝料のみならず、死亡逸失利益もかなりの金額を占めますので、弁護士を介入させての解決が最善です。
不当に低い金額で解決しないためには、弁護士介入が必須だと思ってください。