異時事故
異時事故とは,複数の車両が関与した事故で,一つの目の事故(以下「第1事故」といいます。)と二つ目の事故(以下「第2事故」といいます。)との間に時間的経過が存在するものをいいます。
例えば,時間的経過が存在するけれども同一の場所で発生する玉突き事故や,発生時間のみならず発生場所も異なる場合などもあります。
異時事故では,取扱い方が事案ごとに異なります。
便宜上,次の類型に分類して考えてみます。
- ① 同時事故と同視しうる場合
第1事故と第2事故の発生時間・発生場所ともにほとんど同一である場合(たとえば,玉突き事故が該当します),発生時間・発生場所ともに同時に発生した事故(これを「同時事故」といいます。)と同様に取り扱います。
この場合,民法719条1項前段の規定が適用されるのが一般的です。
「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは,各自が連帯してその損害賠償する責任を負う」という規定にしたがい,第1事故の加害者と第2事故の加害者は連帯して損害賠償責任を負います。
- ② 損害一体型
第1事故による傷害を負ったのちに,第2事故が発生した場合などが考えられます。
この場合,第1事故の傷害の症状が,第2事故発生時にすでに固定,すなわち治療によってもこれ以上の症状改善が期待しえない段階であったか否かにより,取扱いが異なるため,事実認定で争われることが少なくありません。
第2事故発生前に症状が固定していた場合,第1事故と第2事故はそれぞれ別々に考えていきます。
この場合,通常問題は生じません。
他方,第2事故発生前に症状固定していない場合,傷害の部位が同じであれば,異時共同不法行為として取り扱われることがあります。
この場合,第1事故の加害者と第2事故の加害者は連帯して損害賠償責任を負うことになります。
ただし,第2事故の加害者が連帯して責任を負う範囲については,見解が分かれています。
第1事故発生以降のすべての損害を負うとする見解や,第2事故以降に発生した範囲にとどまるとする見解などがあります。
また,異時共同不法行為と構成するか否かにより,通院状況の捉え方が異なります。
その結果,後遺障害等級認定の認定可能性や慰謝料額などにも影響を及ぼします。
このように,異時事故の場合,同時事故それとも異時共同不法行為として取り扱うべき事案なのか,異時共同不法行為として取り扱う場合に加害者の賠償範囲をどのように考えていくのかなど,事案を見極めた上で,適切な対応をとることが求められます。
そのため,異時事故の事案に遭遇されたら,まずは交通事故に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。
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