交通事故の刑事記録の取り寄せ方
1 弁護士法23条の2に基づく照会(以下「23条照会」といいます)
1 物件事故の場合
物件事故の場合は、過失運転致傷罪等による送致がなされていないのが通例なので、管轄の警察署(名古屋地区では基本的に西警察署、中警察署、中村警察署)に対して、物件事故報告書等を取り付けることが考えられます。
その際は、どの事故であるのか、人身事故か物件事故か等を特定する必要があるので、交通事故証明書の提出は必須です。
なお、23条照会の場合は、警察側が個人情報保護条例などを理由に開示に応じないところが散見されます。
2 人身事故の場合
人身事故の場合には、交通事故の現場の見分状況図、当事者や目撃者などの供述調書などがあります。
通常は、検察(名古屋地区であれば基本的に名古屋地方検察庁)に送致されているので、管轄の検察に対して前記23条照会等をかけていくことになります。
第1のステップは送致番号の確認です。
これは管轄の警察署に照会をかけることで判明します。
第2のステップは検察における整理番号(いわゆる検番)と起訴・不起訴の確認です。
これは送致番号を添付して検察に照会をかけることで判明します。
第3のステップは刑事記録の取り付けです。
これは検番と処分内容等を添付して検察に開示・謄写を求めていくことになります。
なお、人身事故といってもほとんどが不起訴となっているため、23条照会で開示される刑事記録は現場の見分状況図のみというのが一般的です。
2 裁判上の手段
裁判上の手段としては、民事訴訟法226条に基づく文書送付嘱託や同法223条1項に基づく文書提出命令などが用意されています。
裁判上の手段を用いるメリットは、23条照会では開示に応じない資料、または黒塗りにされている箇所が開示される可能性が生じるという点です。
しかし問題は、裁判所に文書送付嘱託等の必要性を認めてもらえるかという点です。
特に文書提出命令については、そこまでするのかという疑問を投げかけられることが多いように思います。
また、もう1つの問題として、開示される部分が当方に有利となるか不利となるかわからないという点が挙げられます。
そのため、前記のリスクも踏まえて、弁護士・依頼者間で文書送付嘱託等を用いるかどうかを協議する必要があります。