人身傷害保険とは何ですか?
1 どのような保険なのか
通常、交通事故に遭った際、被害者は、加害者の加入している任意保険会社から対人賠償金の支払いを受けることになります。
一方、人身傷害保険とは、被害者自身が加入している保険会社から直接、傷害保険金の支払いを受けることができる保険のことです。
この人身傷害保険は、1998年に、東京海上日動火災保険株式会社が、被害者となった契約者に十分な補償を提供するとともに、加害者との交渉の負担を解消するという観点から、人身傷害補償保険付き自動車保険「TAP」という商品を開発した際に登場しました。
東京海上日動火災保険株式会社が開発した商品は、他の保険会社にも波及し、いわゆる大手といわれる保険会社の自動車保険には、全て人身傷害保険を附帯することができます。
2 人身傷害保険の特徴
この人身傷害保険の特徴はどこにあるのでしょうか。
まず第1に、過失割合を問わないので、自分の過失割合が大きい、あるいは自損事故であるといったような場合に、極めて大きな効果を発揮します。
自損事故などの場合で大けがを負った場合、健康保険は利用できますが、3割の費用負担は軽視できないものがありますので、その際に人身傷害保険を附帯しているとその負担部分が解消されます。
第2に、相手が任意保険に加入していない無保険車の場合に、必要な補償を受けることができるということが挙げられます。
弁護士が、名古屋の依頼者の方の交通事故法律相談に応じている中で日々実感していることが、世の中に任意保険に加入していない車は思いの外たくさんあるという事実です。
任意保険に加入していない無保険車の場合、相手に資力が無いことがほとんどです。
そのため、被害者の方は泣き寝入りをせざるを得ない状況に陥ります。
その際に、人身傷害保険に加入していると、人身傷害保険金が支給されますので、被害者の方は一定の補償を受けることができます。
3 人身傷害保険の注意点
一方、人身傷害保険を利用することによる不利益は無いのでしょうか。
人身傷害保険を利用しても等級がダウンして保険料が上がることも無いので、人身傷害保険を利用すること自体に特段の不利益は無いと考えられています。
しかし、人身傷害保険が、比較的新しい保険であることや、様々に進化していく中で、他の保険(対人賠償保険・無保険車傷害補償特約など)との関係が大変複雑になっている現状があります。
そのために、人身傷害保険の利用方法によっては、受けられるべき補償が受けられないということにもなりかねません。
われわれ弁護士が、名古屋で依頼者様のご相談に乗っている際も、人身傷害保険と他の保険との関係について、どのように調整していくかについて契約内容と約款を確認しながら、個別に判断していくことがよくあります。
各会社が様々な人身傷害保険を販売しているために、一律の回答は難しく、個別に判断せざるを得ない現状ですので、人身傷害保険利用の際は、交通事故に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。
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