交通事故でケガをした場合、健康保険で治療を受けることはできるのですか?
1 ケガの治療費の負担
交通事故の被害に遭われた方のなかには、お身体にケガを負い、病院などで治療を受けなければならなくなる方もたくさんいらっしゃいます。
多くの場合、治療費は加害者側の保険会社から病院等に直接支払われます。
そのため、治療費が実際いくらかかっているのかや、健康保険が使用されているのかどうかなどを被害者の方はあまり気にしないまま治療を受けることができているケースが多いようです。
2 保険診療と自由診療
通常、風邪をひいて病院で診てもらった場合には、窓口で診察代を支払います。
この場合、領収書をご覧いただくと「保険分」や「自己負担金額」といった記載があるのをご確認いただけるかと思います。
これは、健康保険または国民健康保険(以下、まとめて「健康保険」と呼ばせていただきます。)を使った場合の領収書の内容です。
健康保険を使った場合、小さなお子様や高齢者を除いて原則として治療費の30%を患者さんが負担し、残りの70%は健康保険の関係機関から病院の方に支払われる仕組みになっています。
このような健康保険などの社会保険を利用した病院での診察や治療のことを「保険診療」と呼びます。
これに対して健康保険などの社会保険を利用しない形で病院で診察や治療を受けることを「自由診療」と呼びます。
自由診療を選択した場合、診療行為の一つ一つの単価が高額になる傾向がありますし、窓口で患者さんが100%の支払いを請求されるため、通常の治療の際には保険診療が用いられます。
他方で、交通事故の場合には保険会社から病院に治療費を支払ってもらえるため、自由診療が用いられることが多くあります。
3 交通事故で健康保険を使う場合
保険診療でも自由診療でも、どちらでも被害者にとってはきちんと治療さえ受けられれば問題ないように思われます。
しかし、事故の過失割合が何割か被害者にも認められるようなケースでは、治療費のうちの何割かは被害者の負担になってしまいますので、状況によっては自由診療をさけて保険診療を選択したほうが被害者にとって有利なケースも存在します。
交通事故では健康保険は使えないという話をされる方が、ときどきいらっしゃいますが、それは、自由診療が使われることが多いという実態からきた誤解であり、制度上は、健康保険の使用も可能です。
ただし、事故の治療で健康保険を使用する場合、「第三者傷病届」等の事故や加害者に関する書類を提出して保険者に届け出る必要があります。
これらの届け出の書式などは、保険者ごとにまちまちあり、名古屋で使われている書式が、そのまま他の地域で使われているとも限りません。
保険の制度等で疑問をお持ちの方は、ぜひ一度弁護士とご相談ください。
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