加害者でも慰謝料を請求することができるのですか?
1 交通事故の加害者の慰謝料について
⑴ 慰謝料とは
慰謝料とは、「被害者に生じた精神的損害(苦痛)を填補(慰謝)するものであって、その額は、当然のことながら、精神的損害の大きさによって定まるものである(概説交通事故賠償法[第3版]200頁参照)」とされています。
交通事故の賠償面においては、交通事故により傷害を負い、通院や入院をした場合でないと慰謝料が賠償される見込みは低いといえます。
⑵ 加害者でも慰謝料請求はできるのでしょうか?
ア 被害者側にも過失が生じている場合
慰謝料を請求するためには、請求する相手に少しでも過失がなければなりません。
例えば、過失が0%の被害者に慰謝料を請求することはできません。
交通事故では、加害者側が常に過失割合が100%(10割)であるとは限りません。
加害者が過失100%となる事故類型は、信号無視、追突、ラインオーバーなどが典型的です。
出会い頭、右折直進事故などは、被害者側にも過失がでてきます。
イ 加害者が負傷している場合
交通事故の損害賠償請求において、慰謝料請求するためには、通常、慰謝料を請求する側が、傷害を負っている必要があります。
正確には、通院や入院をしている必要があります。
自己申告ではなく、医師の診断に基づく診断書がないと、慰謝料を賠償してもらうことは厳しいかもしれません。
さらに、ご自身が傷害を負っておらず、ただ単に交通事故が起きて煩わしかったからという理由などでは、慰謝料が賠償されることは難しいかと思います。
ウ 結論
以上のように、交通事故において加害者がケガにより通院ないし入院していて、被害者側にも少しでも過失がある場合には、加害者側からも慰謝料請求をすることができます。
2 加害者の慰謝料の計算の具体例
⑴ 加害者の過失が60%、被害者の過失が40%の事故で、加害者が週3回ペースで首のむちうちで3か月通院継続した場合
むちうち症状で、週3回のペースで、3か月間通院を継続した場合には、慰謝料は、例えば、赤本別表Ⅱ(弁護士基準、裁判所基準といわれることもあります。)基準ですと、53万円です。
ここから、相手方(被害者)の過失分の40%である21万2000円について、加害者が被害者に請求できる金額となります。
⑵ 加害者の過失が80%、被害者の過失が20%の事故で、加害者が週4回ぺースで5か月間、右手首の骨折で通院継続した場合
慰謝料は、赤本別表Ⅰ(弁護士基準、裁判所基準)基準で、105万円です。
被害者過失が20%ですので、105万円×20%=21万円については、加害者が被害者の方へ、慰謝料請求できることになります。
3 加害者でも自賠責保険への請求が可能
加害者の方でも、過失が100%未満であれば、自賠責保険会社に直接自賠責保険金請求ができる場合があります。
過失が7割以上10割未満の場合には、傷害部分の自賠責保険金は、満額の120万円より2割減額されて、最大96万円までの支払いとなります。
自賠責基準の慰謝料計算は、基本的には、①総通院日数×4300円か、②実通院日数×8600円のどちらか低い方の金額となります(令和2年4月1日以降に発生した交通事故の場合)。
治療費、通院交通費、休業損害などの金額にもよりますが、相手方に裁判基準で請求していくよりも、直接自賠責保険へ保険金請求していった方が、賠償金を多く受け取れることがありますので、注意が必要です。
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