交通事故における共同不法行為と過失相殺
1 交通事故における共同不法行為とは
民法上,不法行為という概念があり,交通事故の加害者の行為等がこれに当たります。
多くの場合,加害者は一人ですが,時には加害者が複数いる場合もあります。
例えば,自動車を運転していたところ,後ろの車Aに不注意により衝突され,さらにその後ろの車Bも前方不注意により止まることができずに衝突してきたという場合,後方にいたABの運転者は両方ともに加害者となります。
このような,加害者が複数いるような場合を,共同不法行為といいます。
2 共同不法行為における賠償請求の方法
⑴ 先ほどのケースで,被害者は誰にどう損害賠償請求を行えばいいかを考えてみましょう。
仮に,損害額の合計が100万円で,AとBの過失割合が7対3だとします。
すると,被害者はAに対して70万円,Bに対して30万円の損害賠償請求をすることになるのでしょうか。
実は,このような共同不法行為の場合,加害者らの負う債務は不真正連帯債務というものになります(民法719条1項)。
つまり,AとBの責任は連帯責任となるのであり,AとBはともに被害者に対して100万円の賠償を行う責任を負うことになるのです。
AとBが最終的にいくら負担するかは加害者同士の話にすぎず,被害者とは無関係であることから,このような責任関係になるのです。
したがって,被害者はAだけ,あるいはBだけに対して100万円の支払いを求めることもできるのです。
もちろん,賠償を受ける合計額は100万円となります。
⑵ 次に,被害者がCの運転する車に同乗していて,Dの運転する車と衝突したという場合を考えます。
CとDにそれぞれ責任があるとしても,被害者は同乗していただけであれば,⑴のようにCとDにそれぞれ賠償請求できるということになります。
しかし,たとえば,被害者がCの不注意を引き起こしたために事故が起きたというような場合,被害者も責任を負い,一定の過失割合が認められることになります。
この場合,被害者の割合分だけ先に相殺し,残額をCとDに請求できるということになります。
具体的には,仮に,CとDと被害者の過失割合が4対4対3で,損害額の合計が100万円という場合を考えると, 被害者の負う3割分は先に相殺し,残額の70万円を⑴のようにCとDに請求できることになるのです。
この他にも,共同不法行為は様々なケースがあり,計算方法も異なることがあります。
3 名古屋近辺にお住まいの方へ
これまでに見てきたように,共同不法行為が成立する場合には,過失割合の計算が複雑になり,現実にもめることが多いです。
ですので,複数の加害者がいて,過失割合でもめそうな場合などは,まず弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士法人心では,弁護士費用特約を活用してのご相談を多くいただいております。
また,弁護士費用特約が付いていない場合でも,原則,相談料無料とさせていただいておりますので,ご相談いただきやすいかと思います。
交通事故にあい,賠償関係でお悩みの方は弁護士法人心 名古屋法律事務所にご相談ください。
交通事故の損害賠償における自賠責保険と任意保険の違い
1 自賠責保険とは
自賠責保険は,自賠法に基づいて自動車の運行による人身事故の被害者を救済するために,すべての自動車について契約することが義務付けられている強制保険です。
自賠責保険は,人的損害のみが対象であり,物的損害はその対象外となります。
また,傷害による損害は120万円など一定の支払限度額があります。
そのため,自賠責保険のみでは,交通事故によって発生する損害の全てを補填できない場合が生じます。
2 任意保険とは
任意保険は,自賠責保険では補填しきれない損害(物的損害及び傷害による損害で120万円を超えた部分など)をカバーするために加害者側または被害者側が任意に保険会社との間で契約する損害保険契約です。
したがって,任意保険からは,自賠責保険で補填されない部分の損害が補填されます。
3 自賠責保険と任意保険の関係
例えば, 交通事故に遭ってから3か月間に30日間病院に通院した人がいたとします。
⑴ 自賠責基準だと60日×4500円=27万円が通院慰謝料として支払われることになります。
⑵ 任意保険では,自賠責基準に縛られませんので,損害として認められた金額が通院慰謝料として支払われることになります。
例示の場合では,いわゆる赤本支払基準(裁判基準)によると53万円程度が通院慰謝料の目安とされています。
通院慰謝料が53万円だとすると,自賠基準額から支払われる27万円のみでは26万円不足していることになるため,任意保険から26万円が支払われることになります。
このように,自賠責保険で補填されない部分について任意保険から補填されることになります。
4 交通事故で困ったら
交通事故にあった際に適切な賠償を受けるためには,各種保険の仕組みや支払基準を把握しておくことが重要になります。
交通事故被害者の方が,ご自身で保険制度を把握して,適切な賠償額が支払われるように交渉することは困難なことも多いです。
保険会社と示談する前に保険会社からの提示内容が適切か専門家に一度相談してみることをお勧めします。
弁護士法人心では名古屋の交通事故事件を多く取り扱っておりますので,お困りの際は,お気軽にご相談ください。