過失がある場合の人身傷害保険の利用
人身傷害保険とは,被保険者が自動車に乗車中または歩行中に交通事故によって,死亡した,傷害を負って通院治療を受けた,後遺障害が残ったような場合に,過失割合に関係なく,約款記載の支払基準に基づいて算定された損害額の全額についててん補される保険です。
保険料を安くする代わりに,被保険自動車搭乗中に限定するようなことも可能となっていますので,自分のつけている人身傷害保険がどのような内容かは,一度確認しておくべきでしょう。
前記のように人身傷害保険には「過失割合に関係なく」支払うという特徴があります。
だから,当方の一方的事故に基づく事故で当方がけがをした場合でも,人身傷害保険によって,怪我の対応をしてもらえるわけです。
そして,事故当事者双方に過失がある場合の人身傷害保険の使い方としては,当方の過失が大きい場合と小さい場合とに分けて考えるのがわかりやすいと思います。
まず,当方の過失が大きい(概ね6割以上)場合は,相手方自動車に付帯されている対人賠償保険の保険対応(一括対応)は通常行われないため,当方の人身傷害保険を使用して通院することになります。
いわゆる人傷先行払いです。
先行払いした人身傷害保険金は,当方の過失相殺分に優先充当されます。
そして,人身傷害保険金の支払基準は,いわゆる訴訟基準よりも低めに設定されていることが通例であることから,人身傷害保険金受領後も,相手方に請求できる場合が少なからず生じてくることになります。
次に,当方の過失が少ない(概ね4割以下)の場合は,相手方自動車に付帯されている対人賠償保険の保険対応(一括対応)が通常行われることになります。
いわゆる賠償先行払いです。
自賠責基準を用いて傷害分120万円の枠内で算定する場合は,人身傷害保険が入用になることはあまりありません。
人身傷害保険の基準は自賠責基準と類似しているのが通例であることに加え,自賠責基準では被害者の過失が7割未満の場合に過失減額を行わないという運用をしているからです。
しかし,120万円の枠を超え,訴訟基準で算定するような場合では,事情は異なってきます。
具体的には過失相殺される部分(相手方から支払われない部分)が,過失を考慮しない人身傷害保険によって全部または一部が支払われる可能性が出てくるのです。
この人傷先行払い,または,賠償先行払いにおける人身傷害保険の処理は,非常にテクニカルなところがあるので,人傷先行払い後に相手方にいくら請求できるか,賠償先行払い後に人身傷害保険にいくら請求できるかは,交通事故の処理に詳しい弁護士に相談されるとよいでしょう。
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