交通事故でとても大切にしていた車が壊れてしまったことについて,慰謝料を請求することはできますか?
1 物が壊れたことに対する慰謝料のご相談
交通事故で被害に遭われた方から、物が壊れたことに関する慰謝料は認められないのかというご相談をいただくことがあります。
一般的な感覚としては、非常によく理解できるご相談であり、たとえばご両親の形見の品が壊された場合であるとか、もう市場にはでまわっていない古い型式の自動車を大事に思い入れを込めて整備しながら乗り続けていた場合など、精神的苦痛についても賠償をして欲しいというのが自然な感情ではないかと思います。
2 裁判所の裁判例から見る原則的な考え方
もっとも、裁判所の裁判例を見ていると、原則として、物が壊れたことに関する慰謝料は認めないというのが裁判所の考え方のようです。
物の価値というものは、取引価格等によって客観的に決められるものであり、物に乗せられた思いについては金銭評価の対象とならないというのが、裁判所の原則的な考え方です。
ですので、たとえば非常に古い型式のお車を大切に乗っていて事故に遭われたようなケースですと、当該車両の時価額(通常であれば年式が古いと極めて低額です。)までしか、損害賠償は認められないこととなります。
似たような問題として、ペットの死亡事故などもございます。
ペットは家族の一員のように暮らしているものですが、法律上は売買の対象となる人間の所有物にすぎないと評価されます。
そのため、大切なペットを事故で亡くされたとしても、飼い主の方には慰謝料が認められないのが原則的な裁判所の対応です。
ただし、ペット死亡事故の慰謝料については、一部でこれを認容する裁判例も現れているようです。
3 詳しくは弁護士にご相談ください
裁判所の判断も、裁判官ごとに異なりうるものであり、画一的なものではありません。
大切なお車が壊された場合にも慰謝料を一定額認める判断が、裁判所のなかででてくるかもしれません。
しかしながら、現時点での裁判例の動向を前提にするかぎり、交通事故でとても大切にしていた車が壊れてしまったことについて、仮に弁護士に依頼して慰謝料を請求したとしても、慰謝料が認められる可能性は極めて低いと言わざるをえません。
名古屋で交通事故に遭われた方で、この点についてより詳しく知りたい方は、弁護士法人心までご相談ください。
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