子ども(幼児・児童・学生)の基礎収入について
1 基礎収入とは
基礎収入は,休業損害(被害者が交通事故により受けた傷害の症状が固定するまでの療養の期間中に,受傷及びその療養のために休業し,または,十分に稼働することができなかったことから生ずる収入の喪失)や後遺障害逸失利益(交通事故により身体に後遺障害を残し,労働能力が減少したために将来発生するであろう収入の減少)の金額に影響を与えます。
後遺障害逸失利益の金額は,基礎収入×労働能力喪失率×労働喪失機関に対応するライプニッツ係数で計算されます。
そのため,基礎収入が高ければ高い程,休業損害や後遺障害逸失利益の金額も大きくなる傾向にあります。
2 子どもの基礎収入について
- (1) 基礎収入は,原則として,事故前の現実収入額を参考にします。
源泉徴収票や確定申告書等に基づいて認定されます。
- (2) では,子どものように現実収入額がない被害者の場合はどうするのでしょうか。
子どもの場合は,賃金センサス第1巻第1表の全年齢・学歴計(簡単に言うと平均年収の表です。)を参考にすることが多いです。
男子の場合は,そのうち,男性労働者のものを参考にします。
- (3) では,女子の場合はどうでしょうか。
女子の場合でも,年少女子については,男女の平均賃金センサスを使用することになりますが,他方,年少女子に該当しない場合は,女性の平均賃金センサスを使用することになります。
女性の平均賃金センサスに比べて,男女の平均賃金センサスの方が高い金額になりますので,よく問題になります。
この年少女子の意味については,いくつか裁判例が散見されますので,弁護士にご相談いただいたほうがよいかと思います。
3 さいごに
重い後遺障害が残存してしまったケースでは,基礎収入如何によって大きく後遺障害逸失利益の金額が変わります。
たとえば,症状固定時20歳の被害者に,後遺障害8級の障害が残存した場合,基礎収入を300万円としたときは2427万4350円(300万円×45%×17.9810)となるのに対して,基礎収入を400万円としたときは3236万5800円(400万円×45%×17.9810)となり,1000万円近く金額に差が生じます。
このように,基礎収入をどのように考えるかはとても重要ですので,弁護士にご相談されるのをお勧めいたします。
名古屋やその周辺にお住いの方は,弁護士法人心 名古屋法律事務所までご相談ください。
被害者が高齢女性の逸失利益や休業損害の扱いについて 民法改正とライプニッツ係数