民法改正とライプニッツ係数
1 ライプニッツ係数とは?
交通事故の損害賠償実務においては、将来発生することが見込まれる損害(例えば、後遺障害によって将来収入が減ることについての損害)を現時点において一括で受け取るということがよくあります。
この場合、【本来損害が生じるはずの将来のある時点における賠償金の価値】と【現時点で受け取る賠償金の価値】を等しくするために、現時点における賠償金から、本来損害が生じるはずの将来のある時点までにその賠償金を運用して獲得し得る利息相当分を差し引くこととなっています。
簡単に言うと、将来の100万円の価値は、現在の100万円ではないので(現在100万円受け取ることができたら、それを運用して将来100万円以上にすることができます。)、金額が一部控除されるのです。
これを「中間利息控除」と言います。
そして、この中間利息控除の際に用いられる係数の一つを「ライプニッツ係数」と言います。
ライプニッツ係数を使った交通事故被害者の逸失利益の計算についてはこちらをご覧ください。
2 民法改正によるライプニッツ係数の変化
ライプニッツ係数は、法定利率が何パーセントになるかによって変動します。
この法定利率は、民法において定められるのですが、令和2年4月1日に民法が新しくなり、法定利率に関する条文にも改正が加わりました。
具体的にお話しますと、旧民法においては、法定利率が5パーセントと定められていたのに対し(旧民法第404条)、新民法においては、法定利率が3パーセントに引き下げられることになりました(新民法第404条第2項)。
3 民法改正前と改正後のライプニッツ係数の比較
そのため、10年分のライプニッツ係数を比較してみると下表のように違いが見られることになります。
なお、以下の表は単年のものではなく、毎年の数値を合算したものです。
年数 | 旧民法によるライプニッツ係数 (法定利率5パーセント) |
新民法によるライプニッツ係数 (法定利率3パーセント) ※ただし3年ごとの見直しあり |
1 | 0.95238095 | 0.97087379 |
2 | 1.85941043 | 1.91346970 |
3 | 2.72324803 | 2.82861135 |
4 | 3.54595050 | 3.71709840 |
5 | 4.32947667 | 4.57970719 |
6 | 5.07569207 | 5.41719144 |
7 | 5.78637340 | 6.23028296 |
8 | 6.46321276 | 7.01969219 |
9 | 7.10782168 | 7.78610892 |
10 | 7.72173493 | 8.53020284 |
※1 新民法においては、3年ごとに法定利率が見直されることとなっておりますので(新民法第404条第3項)、それに応じてライプニッツ係数も変動することとなります。
※2 交通事故が発生してから示談が成立するまでの間に法定利率が見直され、ライプニッツ係数が変動した場合でも、損害額の算定において利用されるライプニッツ係数は、交通事故が発生した時点における法定利率を基礎に計算された数値となります(新民法第404条第1項)。
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