確定申告をしていない場合(無申告)の基礎収入について
1 確定申告をしていない場合どのような問題が生じるのか
確定申告をしていない場合、休業損害と逸失利益の基礎収入の計算において、被害者の方が事故前にどの程度の収入を得ていたのかを証明することが難しくなる、という問題が生じます。
休業損害は、事故前の収入を基礎として、事故で休業したことによって減少した収入を請求するものですが、事故前の収入によって休業損害の額は変わってくるため、基本的には、自分自身の収入を証明できるものが必要となります。
また、後遺障害の逸失利益については、後遺障害の等級が認定された場合に、労働能力の低下の程度、収入の変化、将来の昇進・転職・失業等の不利益の可能性、日常生活上の不便等を考慮して算定されるものです。
逸失利益についても、算定の基礎とする収入は、原則として事故前の収入となりますので、自分自身の収入を証明できるものが必要となります。
会社員の方の場合、基本的には事故前年の源泉徴収票の金額をもとに基礎収入を算定しますが、自営業者・自由業者等の方につきましては、確定申告での申告所得を参考に、金額の算定をします。
ただ、確定申告をしていないということになりますと、所得証明書や課税証明書に実際の収入が反映されていない限り、収入を証明するものがないことになり、その人がどのくらいの収入を得ていたのかを客観的に把握することができません。
そのため、確定申告をしていない場合には、被害者の方が事故前にどの程度の収入を得ていたのか証明することが難しくなる、という問題が生じます。
確定申告をしていない場合には、次のような請求方法が考えられます。
2 確定申告をしていない場合の請求方法
まず、自賠責保険の基準に従い、1日あたり6,100円という金額を基準に請求する方法です(令和2年4月1日以降に発生した交通事故の場合)。
ただ、事故前年の年収を考え、1日あたりの金額が6,100円に満たないような場合には、この金額での請求にも根拠が乏しいこととなります。
賃金センサス等の平均賃金を参考に、基礎収入を請求する方法も考えられます。
平均賃金をもとに請求をする場合は、基本的には、その平均賃金を得ることができる蓋然性の立証がある程度必要となります。
この立証ができない場合には、平均賃金をもとに損害額が認定されることは難しくなる場合が多いです。
また、通帳、出納帳、売上帳等の資料によって基礎収入を算出し、請求するという方法もあります。
これらの資料が十分に残っている場合にはよいのですが、残っていない場合には、基礎収入の立証が十分にできない可能性があります。
3 弁護士へのご依頼
確定申告をしていない場合にも、休業損害や逸失利益を請求する方法はありますが、確定申告をしていない以上、実際に休業損害や逸失利益が賠償額に含めてもらえるかどうかはわかりません。
この点については、保険会社と示談をする際にも、しっかりと交渉をする必要があります。
弁護士が介入していない場合には、確定申告をしていないことの一事をもって、休業損害や逸失利益を示談金に含めてもらえない可能性もあります。
そのため、確定申告をしておらず、示談にあたってご不安な方や、示談にあたって名古屋で弁護士をお探しの方は、ぜひ一度、弁護士法人心 名古屋法律事務所までご相談ください。
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