交通事故被害者の方の通院時のタクシー代は全額補償対象になる?
1 通院時のタクシー代が賠償される基準
交通事故の被害に遭われた方が,通院の際にタクシーで通院される場合に,相手方(相手方加入の保険会社)に賠償してもらえる基準は,「必要かつ相当性」が認められるかどうかです。
必要かつ相当性が認められる場合というのは,玉虫色にいかようにも解釈できるのですが,簡単にいいますと,タクシーで通院することが妥当な場合,常識から判断するとタクシー通院がやむを得ない場合に限られると認識していおいてください。
ですから,公共交通機関である電車やバスが利用できる(合理的な通院方法)のに利用しないとか,自分で車を運転するのが面倒だからタクシーを使って通院するいう程度の理由では,相手方にタクシー代まで賠償させるのはまず無理な話となってきます。
2 必要かつ妥当性が認められる場合の一例
- (1) 事故当日の自宅までの帰宅
一人暮らしであったり,家族の方に迎えにきてもらえない場合で,電車やバスなどの利用も困難というような状況がそろえば,タクシー代まで払ってもらえる可能性が高いです。
- (2) タクシー以外に交通手段がない場合
電車やバスが通っていない,電車やバスが通っているとしても,バス停や駅まで徒歩で30分以上かかるというような場合には,タクシー代まで支払ってもらえることに問題はないと思います。
- (3) 歩行に困難な部位を怪我している場合
大腿骨や膝,足首など,車椅子や松葉杖でなければ移動できない,満員電車の場合には,松葉杖での通院はかなり不便だというような場合には,タクシー通院を認めてくれることが通常です。
- (4) 対人恐怖症などの精神的理由によるもの
事故によって,公衆の面前に触れるとパニックを起こしてしまうような場合(事故前からそのような状態にある場合は除く)には,タクシー通院が適切妥当な通院方法ということになります。
このような場合もタクシー通院は認めてもらえることになりますが,かなり例外的な場合だと思ってください。
3 実際に請求するには
- (1) 領収証の保管
タクシー通院をするには,事前に保険会社の了承をとっておくのがベターです。連絡が取れなかった場合でも,後日請求するためには,原則として領収書が必要となりますので,タクシー代金についての領収書は必ず保管しておいてください。
- (2) 保険会社とタクシー会社が直接やり取りする場合
学生の方が,交通事故によって,足を怪我されて,自転車通学できなくなった場合や,お仕事をされている方で足を怪我したので,最寄のバス停や駅まではタクシー代が出る場合もあります。
その場合には,保険会社とタクシー会社の方で月ごとに料金の精算をするという方法もあります。
4 返還請求のリスク
タクシー通院の可否の判断は,必ずまずは,保険会社の了承を取っておいてください。
ご自身の判断だけでタクシー通院できると思いこみ,ずっとタクシー通院されているような方は注意が必要です。
必要かつ相当性が認められないようなタクシー利用であった場合には,訴訟になったとしても相手方にタクシー代金を払わせることは難しくなってきます。
また,タクシー通院が必要なくなってきた事情があるにも関わらず,それを保険会社に告げずにそのままタクシー代金まで保険会社に支払わせていると,後日,加害者側に弁護士等がついた場合にすでに支払ったタクシー代金を返還請求されるというリスクもあります。
5 タクシー通院が認められるかどうかのご相談は弁護士まで
結局は,どのような場合にタクシー通院が認められるかどうかは,個々の事案ごとによるケースバイケースでの対応とならざるを得ません。
ですから,自分の場合にはタクシー通院が許されるのかどうかというご相談をされたい方は,当法人の弁護士までご相談ください。
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