専業主婦の基礎収入について-賃金センサスを用いた計算方法
1 専業主婦の方の基礎収入
交通事故による損害賠償の項目の中には、負傷をしたせいで仕事を休まなければならなくなったことへの賠償である休業損害や、後遺障害が残った場合に将来にわたり労働能力が低下することへの賠償である逸失利益等があります。
これらの損害は、被害者の事故前の収入を基準に損害額を算定します。
ところが、専業主婦の方は、会社員のように会社から給料をもらう立場にはなく、収入をどのように考えればよいのかという問題があります。
この点、専業主婦の行う家事労働も、家族以外の者に頼めば一定の報酬が発生するところ、家事の提供先が家族であるために金銭での報酬の支払いを受けていないだけであり、事故により家事に支障が出た場合には、休業損害の支払いを請求することができると考えられています。
そして、専業主婦の基礎収入は、賃金センサスの女子労働者の平均賃金を基礎収入と考えることが多いです。
この場合の賃金センサスは、年齢や学歴等による区別は原則としてせず、全年齢、学歴計の女子労働者の平均賃金を用いることが多いです。
なお、令和6年の場合、全年齢、学歴計、女子労働者の平均賃金は419万円となっています。
このように、全年齢の平均賃金で考えることが原則ですが、被害者の年齢や事故当時の家事の分担状況によっては、公平の観点から、全年齢の平均ではなく、年齢別の平均賃金を考え、基礎収入を調整して考えることもあります。
たとえば、大腿骨骨折等により1級の家事従事者(女性・症状固定時の年齢90歳)について、賃金センサスの全年齢の女子労働者の平均賃金の2分の1を基礎に、収入を考えているケースもあります。
2 弁護士に依頼をするメリット
専業主婦が交通事故に遭った場合、交通事故に関する知識のない被害者が専業主婦としての休業損害を請求できることを知らないことも多く、保険会社からも専業主婦としての休業損害を請求できることの説明もないため、本来受けられるはずだった専業主婦としての休業損害の支払いが無いまま示談してしまうケースもあります。
専業主婦としての休業損害等の支払いがされるとしても、賃金センサスの基準ではなく、保険会社がよく使用する自賠責の基準で計算をされたりすることもあります。
しかし、自賠責の基準は最低限の基準であるため、金額的に不十分であることも多いです。
専業主婦の方は、現実的な収入がなくとも、家事に従事することには財産的価値が存在する側面があるのですから、賃金センサスを用いた基準でしっかりと請求をしていく必要があります。
また、専業主婦の休業損害や逸失利益の基礎収入に賃金センサスを用いることはもちろんのこと、休業の期間や労働能力逸失の期間や程度について適切に算定し、請求する必要があります。
休業や労働能力喪失の期間が短くなりますと、賃金センサスを用いた基準で支払いがされても、結果的には、少ない金額しか支払いを受けられない可能性もありますので、注意が必要です。
当法人には名古屋にも事務所があり、交通事故の案件を多数扱っている弁護士が所属しておりますので、名古屋で交通事故のご相談をお考えの方は、お気軽に当法人までご連絡ください。
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